コカ・コーラやシティグループも導入するマネジャー育成のHRtech「Butterfly.ai」とは

海外の最先端のHRtechを紹介する「世界のHRtech」。今回紹介するのは、AI技術を活用し、マネジメントやエンゲージメント向上に貢献するサービス「Buttefly.ai」です。

2018年のHR Techカンファレンスのピッチコンテストにてファイナリストとなった「Buttefly.ai」は、サーベイとボットを活用してマネジャーを支援し、組織のエンゲージメントを高めるHRTechツールです。


@Engagementグローバルリサーチ担当:田中萌子
https://twitter.com/om180611
体育会系グローバルマーケター。2015年、新卒で株式会社ディー・エヌ・エーへ入社。ヘルスケア事業部にてマーケティング、セールス、部署人事の立ち上げと採用を経験した後、退職し単身フィリピンへ。2018年から教育事業の海外マーケティングを担当。普段は、セブ島で無限もくもく系シェアハウスWORKROOMの管理人。海外旅行と食べることと人狼が趣味。


CEO自身のマネジメントの失敗経験から開発されたツール「Butterfly.ai」

 Butterfly.ai」の共同創業者でありCEOであるベルギー出身のデイビッドは、以前勤めていた会社で24歳の若さにてマネージャーに昇格した際に、教えてくれる人もおらず、経験したことがない「マネジメント」という領域で大きく失敗した経験を持ちます。その苦い経験から、若いマネージャーに同じような失敗をしてほしくないと強く想うようになり、「Butterfly.ai」というサービスを開発しました。

デイビッドは、HRTech領域におけるAIの強みは、「重要だが時間を割きたくないことを、代わりに行ってくれる」点にあると考えています。たとえば、マネージャーとして課題に感じていることに対しての適切な対処法を探すこと。このような地味に時間のかかる手間を省くことができれば、マネージャーはより生産的なことに時間を使うことができるという思想を持ちます。

マネジャーの「課題」に対してAIボットがアドバイス

①普段使うコミュニケーションツールから簡単なサーベイを行い、可視化

*「ワークライフバランスが適切であると感じる」「自分のチームメンバーと一緒に働き、協力したいと思う」などの質問に対しての13段階での評価を行う。サーベイはすべて匿名で、コメントも追加ができる

Slackなどのチャットツールをつかい、週次で簡単な匿名アンケートを自動で行います。アンケート項目にはエンゲージメント、Well Being、自立性や成長など50種類の項目にフォーカスされます。

具体的な評価項目としては、以下のようなものがあります。

  • Roles and Responsibilities:役割と責任
  • Work / Life Balance:ワークライフバランス
  • Management:マネジメント
  • Team Work:チームワーク
  • Workplace:職場環境

このアンケートは自動集計されてリアルタイムでダッシュボードに可視化され、マネージャーがチームの状態を見ることができます。

この機能によって、チーム単位で組織状況が可視化され、マネージャーが適切なタイミングで適切な解決策を打つことができるため、結果的に会社全体のエンゲージメントを高めることができるようになります。

②ダッシュボードから組織状態をリアルタイムで把握

集計された情報は、リアルタイムでダッシュボードに反映されます。また、アンケートの結果をより正確に確認することを目的として、マネージャーとメンバー間で匿名でチャットすることが可能になります。

*週次の評価レポート。直感的にわかりやすい絵文字や色、数字でまとめられている

スコアは週次でまとめられ、直感的にわかりやすいUIでダッシュボード化されます。半年単位などのフィードバックとは異なり、週次推移での変化を把握できることで、変化が生まれた要因を特定しやすくなります。

③マネージャーが直面している問題への解決法を、AIが提案

このアンケート情報を元に、マネージャーにどんな情報が必要なのかをAIが自動的に判断し、動画や記事などの情報やコンテンツを提供します。提供される情報にはYouTubeの動画やTEDTalkの講演から、Butterfly.aiのオリジナルも存在します。

具体的なフローとして、マネージャーがツールを閲覧すると、ボットが先週のチーム状態のサマリを教えてくれます。

*週次のサマリ、重点項目をピックアップして教えてくれ、重点項目について必要な情報を提示してくれる

先週のチーム状態のうち、課題があるポイントについて、課題解決のための情報を提示してくれます。例えば、「組織の団結」という項目のスコアが低かった場合には、「メンバー間で意見やフィードバックを促進するための方法」といった一般公開の記事を読むように提案します。

このように「定量的な課題」に対して「解決策としてのコンテンツ」が提示されることで、コンテンツに対して高い意欲で学習することができるようになります。

マネージャーの「伴走役」として活用できる


*マネジャーの課題に最適化されたコンテンツを紹介(YouTubeの動画やTEDTalkの講演、Butterfly.aiのオリジナル記事など)

「Butterfly.ai」は、マネージャーが自ら課題を探さなくても、リアルタイム的にチームの状態が点数化・可視化されることで、AIが課題を特定しリマインドしてくれるところが特徴的なポイントです。感覚的に気づいていることでも、改めてリマインドされることで課題解決へのモチベーションを高められるところが「Butterfly.ai」のバリューです。

また、マネージャー自身のスキルとして、どの分野を重点的に対策・強化すべきなのかを客観的に知ることで、マネジメントスキルの向上につながり、会社全体としてのエンゲージメントを高めることにつながりそうです。

(編集後記)

組織エンゲージメントの本質はサーベイツールを使うことでもなく、高級なイスにすることでもなく、リモートをOKにすることでもありません。

本質的に大事なことは2つです。1つめは「メンバーの気持ちを知る」ことにあります。何を目指しているのか、どう過ごしたいか、いまどう思っているか、なぜそう思っているかなどの、メンバーの状態を正確に把握すること。

そしてそれを把握した上で「個々人に最適化したアシストをする」ことが2つめの本質です。ゴール/目標に対して、適切なタイミングや手法で課題を解決をすること。

まさにコーチのように、本人に寄り添って支援することが「エンゲージメント」を高める上で効果的であると考えています。そして、その役割を担っているのが、メンバーにとって身近な場所にいるマネジャーになります。

一方で、マネジャーに託されている責任は、このエンゲージメント向上だけではなく、短期的な事業成長の役割なども期待されており、マネジャーへの負担はこれまでよりも重くなっています。

そこで、今回紹介した「Butterfly.ai」のような、テクノロジーの力を活用して、マネジャーを支援するサービスへのニーズはさらに高まっていくと考えられます。この「Butterfly.ai」自体が提供する価値は、現時点では限定的ではありますが、今後さらなる進化をし、多くのマネジャーをアシストする存在になることを期待しています。

「世界のHRtech」では、特集するツール、企画を募集しています!こんな企業を取り上げてほしいというご希望があれば、私のTwitter(@om180611)もしくは@Engagementのフォーム(こちら)まで。

Reference

Butterfly.ai(最終閲覧日:2019年2月25日)
https://www.butterfly.ai/

Demo Day Pitch – AI Category – Butterfly AI(最終閲覧日:2019年2月23日)
https://www.youtube.com/watch?v=fG6_NUkySa8

HRTechカンファレンスをレポート!今年の新トレンド徹底分析(最終閲覧日:2019年2月23日)
https://hcm-jinjer.com/media/contents/b-contents-hitotech-hrtechconf-180926/

Interview with David Mendlewicz CEO at Butterfly.ai(最終閲覧日:2019年2月23日)
https://www.winwinatwork.com/interview-with-david-mendlewicz-ceo-at-butterfly-ai/

Butterfly: Turning Employee Feedback Into Customized Leadership Training for Managers(最終閲覧日:2019年2月25日)
https://www.disruptordaily.com/butterfly-turning-employee-feedback-customized-leadership-training-managers/

編集・文:田中萌子

News Letter

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    Moeko Tanaka

    @Engagement編集長兼リサーチャー/ライター。セブ島に住んでいます。