【じんじ図鑑】新入社員歓迎ランチもリモートワークのカフェ代もまとめて支給する「PLAY-AID Allowance」

今回のじんじ図鑑は、CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を提供する株式会社プレイドさんの「PLAY-AID Allowance」をご紹介。

プレイドさんは、今年7月にGINZA SIXに移転したばかり。執務室と会議室の間仕切りもなく、仕切りという仕切りが一切ない、パーテーションレスでクリエイティブな空間になっています。

そんな空間と同様に、創造性を解放してくれる制度が「PLAY-AID Allowance」。

普通に考えると経費として処理するものを、最初から手当として支給し「これって経費として使えるのか?」と考える無駄や「経費を精算する」行為自体の無駄を無くしています。

無駄を省くだけに止まらず、その”手当て”に「余裕」を設け、それによって創造性も刺激しています。そんなプレイドさんの取り組みをアクセラレーターチームの牧野さんと清藤さんにお聞きました。




牧野祐己さん エンジニア 兼 アクセラレーターチーム リーダー
東京大学工学系研究科で修士課程卒業。2009年から2014年まで、IBMソフトウェア開発研究所で研究開発業務に従事。2015年にプレイドに参画し、データ分析エンジンの研究開発を担当。

 


清藤麻衣さん アクセラレーターチーム HR担当
2008年にグリー株式会社へ入社。人事として採用業務に従事。2014年に株式会社マネーフォワードへ入社し、社長室にて人事業務全般に従事。2016年よりプレイドに参画。


 

自由度が高いから、新しい発想が生まれる

まず、PLAY-AID Allowance(以下、Allowance)とはどんな取り組みなのか、教えてください。

月額固定の手当として職種や役職に関わらず、すべての社員に同じ金額を支給する取り組みです。この手当の使い道としては大きく2つのことを想定しています。

「場所を気にしないで働くための手当」と「みんなと気軽にコミュニケーションをとるための手当」です。

1つ目の「場所を気にしないで働くための手当」は、オフィス以外で働く人のためにスマートフォンそのものや、モバイルルーターのようなデータ通信端末もしくはSIMカードのような「通信ができる」もの。

また、コワーキングスペースやカフェの費用などの「仕事場」になるもの、などの利用を想定しています。

2つ目の「みんなと気軽にコミュニケーションをとるための手当」は、新しくメンバーがジョインしたときのウエルカムランチや、休憩中に雑談しながらコミュニケーションをとるときのちょっとしたお菓子や仕事終わりに飲みにいったりなど、メンバー同士の関係性を深めることに繋がる利用を想定しています。

そして、この取り組みの重要な部分としているのが、手当として支給している金額と使い道に「一定の余裕」を持たせていることです。

 

–「余裕」とはどういう意味ですか?

「これに使ってください」、「これ以外は使ってはいけません」ということはもちろんやっていません。むしろ「金額と使い道に自由度」をもたせ、新しい使い方を見つけて欲しいと考えています。

具体的な金額は差し控えますが、2つの利用用途から逆算して「このくらい利用するだろう」という考え方から金額を決めて、それに「一定の余裕分」を上乗せした金額を支給しています。

 

–どのような背景から開始したんですか?

こちらの記事 (「スタートアップでよくやるコミュニケーション施策をだいたい辞めてみた話」 )でも紹介しましたが、これまでコミュニケーション観点から多くの取り組みを導入していました。もちろん、それぞれの施策としては意味があると考えていましたが、運用面における負荷が大きくなったことは少なからず考えるきっかけとしてありました。

加えて、かならずしも全員が使うわけではない備品などに対して一つ一つルールを定め、そのルールに沿ったプロセスをつくり、そのプロセス自体の管理が発生していました。

例えば、モバイルルーターを支給する/しないとした場合に、どの職種でどんな役割の人には支給するのか?ということ定義し管理しなくてはいけません。当社だと役割変更も少なくないので、その役割変更の把握とその場合の回収コストに説明コストなども発生します。

また人によっては、同じ通信をするなら端末を2台持ちしたくないからテザリングでいいよっていうケースもありました。それであれば、各自が自由に必要に応じてやったらいいんじゃないかなと。

これまでの取り組みに関するルール自体を一斉になくし、各自の必要性と裁量にあわせて自由に最適なやり方を考えてもらうのが、良いと思った理由の一つです。

 

「これ経費で落ちるかな?」と考えることが非生産的

–自由度をもたせながら、経費として申請してもらうこともできるかと思いますが?

あえてそうしないのは明確な意思としてあります。

「何が経費で、何が経費でないか」を考える無駄や「(少額の)経費を申請する・承認する・精算する」業務プロセスの無駄をなくしたいなと思っています。

わかりやすい交通費や出張の宿泊費なんかを除くと、日々仕事をしていると「これ経費でつかっていいのかな」って考えることって、よくあることだと思っています。それがめんどくさくて、自腹を切ったり、場合によってはそれ自体を諦めたりしているかなと思います。

これってつまり、創造性をなくすことにつながっているんじゃないかと思います。誰かに許可をとることなく、自分の思った通り自由に意思決定できれば、より新しいトライが生まれてくると思っています。

だからこそ、「経費として自由につかっていい」ではなく、あえて「手当」としてすでに自分のものになっている中で、自由な使い道を考えてほしいという想いがありました。

 

–一方で、そのような期待した取り組みをしない人もいた場合に、手当だと回収できなくなると思いますが?

前提として、我々の事業・プロダクト自体がまだまだ成長・伸びしろがあるものだと思っているので、プロダクトづくりにおいても、自由に裁量を持たせて自走してもらうことが必要だと思っています。

そのため、このような取り組みにおいても性善説で社員を信頼して使い方は任せています。何かフィットしないケースがあれば、それはその都度修正をしていけば良いと思っています。

またこの取り組み、実は「β版」として社内でもコミュニケーションをしてスタートしています。これはプロダクトと同様に、これが完成形ではなくユーザーの声(ここでは社員の声)をベースにして、より最適な形に改善していくという余地を残しています。

 

有給取得も無制限、圧倒的に自主性を重んじるプレイドのワークスタイル

–社員の方の自主性・自発性を信頼しているということですね。

そうですね。これ以外にも、フルフレックスやリモートワーク、他にも有給休暇の取得無制限など社員を信じ裁量をもって任せていく取り組みは多く導入しています。

リモートワークや有給取得について、誰かに申請して許可を得るプロセスも一切ありません。

 

–有給無制限はすごいですね。

そうかもしれません。でもこれも、有給あと何日だっけ?とかって、考えるのがちょっと無駄だよなって思っています。プロとして任せられたアウトプットにはしっかりコミットしつつ、休むべき時には自由に休めばいいという社員の自主性を重じているひとつのメッセージだなと思っています。

 

「これってAllowance でいいじゃん」という空気が生まれている

–「Allowance」は実際にどのようにつかわれているんでしょうか?

よく使われているのは、想定していた通りのことですが、データ通信、カフェ、コワーキングスペースの利用、ウエルカムランチなどになります。

ちょっとユニークな利用ケースですと、朝活としてフィットネスジムに参加したり、イベントに参加したりなど。あと当初想定から良い意味で外れた使われ方だと、取引先の人へお誕生日のお祝いを送るっていうケースもありました。

 

–なるほど。確かに「お誕生日のお祝い」は営業経費で落ちるかもしれなが、説明・申請する手間がありますね。

そうですね。そういったことでいちいち頭を悩ませたり、手を動かすのは、あまり生産的ではないですよね。イベントにしても参加費500円とか1000円とかだったりすると、わざわざ申請すること自体結構コストになります。

あと、互いに「手当がある」っていうのを知っているからこそ、「これってAllowanceでいいじゃん」っていう考えが徐々に浸透してきている気がします。

人を巻き込みやすくなったり、何か自分でトライする時に「自分の中での言い訳(Allowanceを使えばいいと)」がつくれるから、やりやすくなっていると思います。


–検討段階で想定していた懸念などはどういったものがありましたか?

当初は、ビジネスメンバーとエンジニアでは、職種別に働き方のバラツキがあることで、公平さに欠けるのではないかという指摘もありました。ですが、制度として「余裕」をもたせたことで、実際に導入する際には、その公平さに関する指摘もあがりませんでした。

ビジネスメンバーは外で働くことが業務上多いですが、別にエンジニアでもリモートとかする(=外で働く)こともあるわけだから「決して不公平ではないよね」という理解がメンバー全体にあることも、ネガティブな声が上がらない要因だと思います。

ちょっと話はそれますが、当社ではエンジニア以外のコーポレートのメンバーもgithubを使っています。こういったエンジニアカルチャーが会社全体に浸透しているので、職種を跨いで互いの理解が進んでいるのではないかと思います。

 

–実際に導入した上での効果はどう評価していますか?

現時点で、何か定量的な評価ができているわけではないですが、先ほども述べた「取引先へのお祝い」のケースのように「これってAllowance でいいじゃん」という使い方が生まれています。

これは、これまでなかった出来事であり、社員の創造性を刺激できていると実感しており、自発的なクリエイティビティを大事にしているカルチャーが促進されていると考えています。

結果的に社員の生産性が高まることで、社員にとっても過ごしやすく、やりがいを感じられ、会社としてもいいアウトプットが生まれ、ユーザーさんにも喜んでいただけるようなポジティブなループがまわっていくと思います。

 

 

— 編集後記 —

余裕を持たせ、任せること。それが新しい、アウトプットにつながる。

 

雑談からアイデアがうまれるってよく言われることですが、何かルールや枠組みにあてはめずに、“いい感じのゆるみ”を意識的につくりだすことが、あたらしいクリエイティブをうみだしていると実感しました。

企業の中でも「ルール」ってたくさんあると思います。自分の会社の当たり前とされてきた「ルール」を一回やめてみたり、ちょとゆるくしてみるだけで、クリエティブを生み出す余地が生まれるかもしれません。

 

 

<聞き手プロフィール >

野崎耕司 
@Engagement編集長 / 株式会社トラックレコード代表取締役(共同経営者)。DeNAでの人事プロジェクト「フルスイング」の責任者、MERYの雑誌事業責任者やブランディング責任者などをつとめ、株式会社トラックレコードを2018年に設立。
https://twitter.com/nokonun

イラスト:皐月透弥

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    koji nozaki

    @Engagement編集長 / 株式会社トラックレコード代表取締役(共同経営者)。DeNAでの人事プロジェクト「フルスイング」の責任者、MERYの雑誌事業責任者やブランディング責任者などをつとめ、株式会社トラックレコードを2018年に設立。