記名式の360度フィードバックで「自律的成長」を促進する9つの設問|JinJiのトリセツ

日本最大級のスポットコンサルプラットフォーム「ビザスク」を運営する株式会社ビザスク。「世界中の知見をつなぐ」をビジョンに、ひとりひとりの貴重な知見をデータベース化、 マッチングする事業を展開しています。同社では相互の学習と成長を後押しし、社内の知見をつなげる360度フィードバックの取り組み「ピアコメント」を実施しています。

ピアコメントは、半期に一度のタイミングで、上司だけではなく、仕事で関わりのあるメンバーから記名式でフィードバックをもらう取り組みです。設問内容や運営方法におけるこだわりによって社員間コミュニケーション、成長促進においても有効なツールとして機能しています。同取り組みについて、採用や人事制度作りを担当するHRマネージャーの山本彰人さんにお話を伺いました。


山本彰人さん/株式会社ビザスク HRマネージャー
2004年に大学卒業後、大手SIerにて法人営業に従事。2006年に大手人材会社へ入社しキャリアコンサルタント、営業MGR、営業企画MGRなどを歴任。その後大手PR会社にて中途採用および人事企画の責任者を兼任。2018年4月にビザスクに入社。


賞賛、尊敬、改善、期待を伝える360度フィードバック

-ピアコメントとはどのようなものですか?

ピアコメントは、上司だけじゃなくてチームメンバーとか全く違うチームのメンバーからフィードバックを贈り合うものとして以前から運用されていました。

エンジニアとビジネスの距離も近く、職種を跨いだフィードバックも活発ではあったのですが、フィードバックの記入体裁が自由コメントのような形で、何を書いていいか分からないとか、なかなか書きづらい、というような声が上がったので、自由コメントではなく、具体的な設問形式にしたのが、今のピアコメントです。

このピアコメントの目的としては、相手の良い部分を褒めるという純粋なものから、ポジティブな面でも、ネガティブな面においても、上司からは見えていない箇所に指摘をもらい、改善に活かすことをゴールとしています。

 

項目を細かく分け、なるべくカジュアルに

-ピアコメントの具体的な内容はどのようなものでしょう?

「ここを褒めたい」、「ここが伸びしろ」、「半期にアドバイス」のパートがあり、全体で9つの設問となっています。それぞれ目的は違うのですが、メンバー同士がそれぞれコメントを伝え合うことで純粋に「嬉しい」という前向きな感情が生まれています。

一方で、ただ「嬉しい」だけで終わるのではなく、成長の機会としても活用しています。自分自身ができるようになったことを他人の目線から振り返ることで、自信となり、新たな成長に繋がっていきますし、フィードバックし合うことでチームワークの改善にも繋がります。

誰でも人からレビューされることには抵抗が少なからずあったり、人の悪いところを指摘することの難しさがあります。だからこそポジティブな内容を踏まえながら、改善するように機能するものにしたいと考えています。

 

-それぞれの設問設定の意図について教えてください

①~⑤は「感謝」「賞賛」を伝える目的があります。まず『①成長を褒めたい』の項目は、成長した項目について、承認・賞賛し、それを相手に伝えることで、自信を持ってもらうことを狙いとしています。

『②日々の感謝』は、ありがとうを言う機会ですね。アドバイスが的確とか業務に関わることはもちろん、例えば宅配便に対応してくれてありがとうとか。そういった普段伝えそびれている、ありがとうを可視化することで、組織としての関係性を良くする狙いがあります。

『③学びや気付き』『④みんなの成長』に関しては、ビザスクがお互いに学び合うことを大事にしている組織なので、自分が何を与えているかを知る機会として設けています。もちろん何も書いて貰えなかったときは、自分を戒めるキッカケにもなりますしね。

『⑤ここが凄い』というのは、普段横にいる人のすごいなと思ったことを何でも書けるようにしています。あえて直接言うほどではないことを伝えられる項目です。これによって、相手に自信を与えることや尊敬の想いを共有することで、組織としての関係性が濃くなる効果もあるかと思います。


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-「褒める」に関わる設問項目が多く、重要視されているようですね。

そうですね。あくまで個人の意見としてですが、フィードバックの場が叱られる場になるのは良くないと考えています。ネガティブなレビューはモチベーションにマイナスの効果を生みがちですので、ポジティブなレビューというのを強く意識しています。

 

-次の『ここが伸びしろ』については?

こちらは、純粋に「改善」を伝える役割を持っています。上司以外の人から貰う機会は少ないので、大事な項目だと思っています。

ですが、このような改善を伝えることは心理的な負担が少なからずあります。なので、設問上のテクニカルな工夫ですが、あえて似たような質問として『⑥イケてないぜ』というより厳しいトーンの設問を置くことで、『⑦もっと輝くよ』について記入しやすくするように設計しています。なかなか難しい部分なので、どちらか書きやすい方に書いてもらればOKという認識をしています。

-『次の半期にアドバイス!!』の目的は?

『⑧こんな能力』では、例えば優秀なエンジニアだったら、営業視点を持つことで更に優秀になるよ!とか、目標になり得ることを教えてあげる感覚です。伸びしろの項目が比較的ダメ出しのような内容なのに対して、こちらでは期待値を伝える内容になっています。

なので『⑨こんな人になって欲しい』の項目でも、能力に縛られずに、社内での役割や中長期的な目標等、こんな人になって欲しいという期待を書く場所として設けています。

-フィードバックは誰から受けるのでしょうか?

基本的には自由で、仕事で関わっている人であれば誰でもOKです。人によって、フィードバックを貰う相手の傾向にも差が出てきています。基本的には自分の成長のためにフィードバック相手を選ぶことがほとんどですが、チームを管轄するマネジャーであれば、担当チームの成長のために、そのチームと関わった相手を選ぶ人もいます。

そこは個人差があっても良いと考えていて、自分が褒められたら嬉しい人から褒められる、のが効果としては一番大きいのだと思います。逆に関連性が無さすぎる人からフィードバックを貰っても意味がないので、自分で設定する形が最善かなと、現状では考えています。

人数は3人としています。あまりに多くの人から貰ってもしょうがないし、少ないと多角的でない。3人から3方向貰えば、ある程度的を得たコメントが返ってきます。

 

-確かに、人数が多すぎると記入する側の負担が増えるので、3人は絶妙な人数設定ですね。他にも運営面で工夫したことはありますか?

項目を細かく分けるという点です。褒めることや感謝すること、ダメ出しなどを全て網羅するために項目を分けて提示しています。紙を1枚渡されてフィードバックしろと言われても、なかなか簡単には書けないものだと思うので。

あとは質問文をカジュアルにしていることですね。世の中のフィードバックシートなどは、雰囲気が固すぎてなかなか答えづらいので、かなりフランクな形にしています。

 

-ピアコメントは評価にはどのように活用されるのですか?

ピアコメントは目標設定や評価会議の前に集めて、それを自己の振り返りおよび評価時の参考材料となるような立ち位置で活用しています。

 

「機会がないとわざわざ伝えない」から、そのための機会を作る

-実際にピアコメントをもらうことで、どのような効果が生まれているのでしょうか?

社内のメンバーの声を聞いたところ「意外なところをみてくれているのが嬉しい」とか「数字に直結するわけではない普段の振る舞いについて、コメントをくれるのは面白い」や「自分ではあまり自覚していなかった能力でも他の人から見ると良い点として認識されることに、逆に気づきを得た」など、自分では気づかない自分の価値に気づいたという声があがりました。

また、「自覚していなかった能力も意識して、チャンスがあれば伸ばしていこうと思った。また、自分の能力を他の人にも展開していきたいと思った」などの成長意欲や、他者への伝達意欲に関わる声もありました。

逆に、コメントを送った感想として、以下のように機会がないことで伝えられていないという声があがりました。

 

「何よりも、感謝の気持ちを伝えられていないと感じました。こういうところを尊敬している、助かっている、もっと良くなる。そういったコミュニケーションは日々業務に追われる中でどうしても劣後してしまいます。日々、伝えるチャンスは溢れているので、意識的に伝えていきたいと強く思いました。」

 

「コメントを送る相手の『ポジティブな面』は、実は普段の業務からよく気づいているし考えているものの、あらためて伝える機会がない状態でした。そんな中でコメントを送れたことで、相手へ自分の気持ちや気づきが伝わったと思うと、こちらも仕事を一緒にやりやすいですし、相手もそう感じていると嬉しいなと思います。」

 

 

-「自分で気づいていなかった」という声が多いですね。

自分の意識の外にあったことでも、人から褒めてもらえればポジティブなマインドを作ることができます。また、人から言われることによって、自分も他の人のそういった部分に気づいていかなければならないという意識が発生するので、ここでも良い循環が生まれているのではないかと思います。

同じ考えから「あなたから学んでます」が非常に重要だと思っていて。人のことを書けないと、人から自分が学べていないことに気づき、反省の機会になります。また人から意外な「学んでいること」を伝えられることによって、より人に対して教えようという意識が生まれます。

 

ーこのようなコミュニケーションが目指すところは?

周りから見てもらい評価されていることが分かると、成長実感を得ることができるんです。自分が課題としていた部分が評価されていることを目にすることで、その課題を解消した、というスキルの自己所有感を生みます。

スキルの自己所有感が生まれると、同時に新たなスキルや課題設定に向かうことができ、プラスαの効果が期待できるという循環です。

 

更に良いフィードバックの場を目指す

-ここまでの取り組みについて、どのように評価されていますか?

質問設定時に想定していた狙い通りのコメントがなされ、実際に良いフィードバックを貰えたと喜びの声が上がっている点は評価しています。一方で「もっと厳しい意見が欲しい」という声も社内から挙がっておりますので、これは今後の課題と認識しています。

 

-今後どのような展開をお考えですか?

もう少し頻度を増やそうかと今考えています。またコメントだけでなく、仕組みをカジュアルにしてみるのも考え中です。例えば投票制とかですね。オペレーションに関しては、もっとスムーズにまわせるようにしていって、更に良いフィードバックの場としていきたいですね。

 

(編集後記)

このフィードバックシステムの中でも、組織成長の観点でレバレッジが高いと感じた設問は「私はあなたから学んでます」です。記事中でも触れていますが、この設問に回答ができていないと「自分自身が人の知見や知識」を盗めていないことに気づくことに繋がりまた逆に相手に伝わることで、相手は「もっと誰かに教えよう」というマインドに変化する。

つまり「教える」と「学ぶ」がエコシステムのようにグルグルと回る構造を促すキラークエスチョンになっています。そしてこの設問を生み出した会社が手がけるサービスが「世界中の知見をつなぐ」をビジョンに掲げていることが、いい意味でニクイです。

「社内の知見をつなぐ」この設問やフィードバックの仕組みを、ぜひ皆様の組織成長に活用していただきたいと思う、そんな取り組みです。

 

 

取材・編集:野崎耕司
文:渡邊志門
撮影:杉本晴

koji nozaki

@Engagement編集長 / 株式会社トラックレコード代表取締役(共同経営者)。DeNAでの人事プロジェクト「フルスイング」の責任者、MERYの雑誌事業責任者やブランディング責任者などをつとめ、株式会社トラックレコードを2018年に設立。